下痢の種類

下痢には大きく分けて「急性下痢」と「慢性下痢」の2種類があります。

• 急性下痢
  ウイルスや細菌の感染、食あたり、冷え、薬の副作用などが原因で突然起こります。多くは数日で改善しますが、発熱や血便を伴う場合は医療機関の受診が必要です。
• 慢性下痢
  3週間以上、下痢や軟便が続く状態をいいます。腸の炎症、内分泌の異常、ストレスなどさまざまな要因が関係します。

便の状態（形・色・におい・回数）は、原因を探る大切な手がかりです。診察ではこうした情報を丁寧にうかがい、必要な検査をご提案します。

注意すべき併発症状

次のような症状を伴う場合は、感染症や炎症性腸疾患、大腸がんなどの可能性もあります。早めの受診をおすすめします。

• 発熱や寒気
• 血便や黒い便
• 強い腹痛や吐き気
• 脱水（口の渇き、尿が少ない、ふらつく）
• 夜間にも下痢が続く
• 体重減少

特に高齢の方や持病のある方は、脱水や電解質異常を起こしやすく注意が必要です。

慢性的な下痢と関係する病気

長期間続く下痢は、以下のような病気が関係していることがあります。

• 過敏性腸症候群（IBS）
  ストレスや緊張により腸の動きが乱れ、下痢や便秘を繰り返します。
• 潰瘍性大腸炎・クローン病
  大腸や小腸に慢性的な炎症が起きる病気で、血便や体重減少を伴います。
• 慢性膵炎・胆のう疾患
  脂肪をうまく消化できず、脂っぽい便が出ることがあります。
• 甲状腺機能亢進症
  代謝が活発になり、腸の動きが速くなって下痢が続くことがあります。

「体質だから」と思い込まず、消化器内科でしっかり原因を調べることが大切です。

急性的な下痢と関係する病気

• 感染性胃腸炎（ウイルス・細菌）
  ノロウイルス、カンピロバクター、サルモネラ菌などが代表的。発熱や嘔吐を伴うことも。
• 食中毒
  加熱不足の食品や傷んだ食べ物が原因となります。
• 薬剤性下痢
  抗生物質、制酸剤、糖尿病薬などの影響で腸内環境が乱れることがあります。
• ストレス性下痢・冷えによる下痢
  一時的な腸の過敏反応で起こることもあります。

感染や食事が原因の場合は一過性で改善しますが、症状が長引くときは検査が必要です。

下痢の検査・治療方法

主な検査

• 便検査：細菌・ウイルス・血液の有無を確認します。
• 血液検査：炎症・脱水・甲状腺機能などを調べます。
• 腹部超音波検査：膵臓や胆のうの状態を確認。
• 大腸内視鏡検査：炎症やポリープ、がんの有無を確認します。

治療の考え方

原因に応じて、整腸剤・抗菌薬・炎症を抑える薬・ストレスケアなどを行います。感染性の下痢では水分補給と腸内環境の回復が大切です。自己判断で下痢止めを使うと悪化することがあるため、医師の診察を受けましょう。

下痢と過敏性腸症候群（IBS）

過敏性腸症候群（IBS）は、検査をしても明らかな異常が見つからないにもかかわらず、下痢や便秘、腹痛を繰り返す病気です。主な原因は、ストレスや緊張などによる自律神経の乱れ、腸内環境の変化、腸の過敏な反応などです。

IBSに多い症状の特徴

• 朝の通勤・通学前にお腹が痛くなる
• トイレに行くと痛みが落ち着く
• ストレスやプレッシャーで症状が悪化する
• 夜間は比較的落ち着く

こうした症状が続く場合、日常生活に支障をきたすこともありますが、適切な治療でコントロール可能な病気です。

当院で行うIBSの主な治療

IBSの治療は、薬による症状コントロールと、生活習慣・ストレス対策の両面から行います。

薬による治療

IBS（下痢型・混合型など）では、症状に合わせて次のような薬を使用します。

• 腸の動きを整える薬（消化管運動調整薬）
  腸の過剰な動きを抑え、腹痛や下痢を改善します。
  例：トリメブチンマレイン酸塩
• 整腸剤・プロバイオティクス
  腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整えることで下痢や便通異常を改善します。
  例：ビフィズス菌製剤、ラクトミン製剤など
• 5-HT3受容体拮抗薬（下痢型IBSに使用）
  腸の過敏な動きを抑え、便回数や腹痛を減らします。
  例：ラモセトロン塩酸塩（イリボー）
• 抗不安薬・自律神経調整薬
  ストレスや不安が強い場合、腸の反応をやわらげる目的で使用することもあります。
  例：少量の抗不安薬、抗うつ薬（SSRIやSNRI）などを症状に合わせて処方します。
• 漢方薬
  体質や症状に応じて、大建中湯・半夏瀉心湯・桂枝加芍薬湯などを使用する場合もあります。冷えや腹部膨満感、ストレス性の下痢に有効なことがあります。

生活習慣・ストレス対策

IBSでは薬だけでなく、生活リズムや食事、ストレスケアも重要です。

• 規則正しい睡眠と食事
• コーヒー・アルコール・刺激物の摂りすぎを控える
• 深呼吸や軽い運動でリラックス
• 腸内環境を整える食事（発酵食品・食物繊維）

患者さんの症状・体質・生活環境などを考慮しながら、オーダーメイドで組み合わせて治療していきます。