胸やけとは

胸やけとは、胸の中央からのどの奥にかけて「焼けるような感覚」や「酸っぱいものが上がってくる感じ」を伴う症状です。主な原因は、胃酸が食道に逆流してしまうこと。私たちの胃の中は強い酸で満たされていますが、本来は食道に上がらないように仕組まれています。ところが、加齢や肥満、ストレス、食生活の乱れなどによってそのバランスが崩れると、胃酸が食道に流れ込み、粘膜を刺激して胸やけを起こします。
「食べすぎたから」「寝る前に少し食べただけ」と軽く考えてしまう方も多いのですが、胸やけが繰り返す場合は胃食道逆流症（GERD）や胃炎などの病気が隠れている可能性があります。

注意すべき胸やけ症状

胸やけは多くの方にみられる一般的な症状ですが、次のような状態が続く場合は注意が必要です。

• 胸やけが週に2回以上起こる
• 胃薬を飲んでも改善しない
• のどの違和感、声のかすれ、咳が長引く
• 食欲不振や体重減少がある
• 胸の奥に痛みを感じる
• 飲み込みづらさ（つかえ感）がある

こうした症状は、食道炎や食道がんの初期サインであることもあります。市販薬で様子を見る前に、一度内視鏡検査（胃カメラ）で原因を確認することをおすすめします。

胸やけと胃がんのリスク

胸やけそのものが胃がんを直接引き起こすわけではありませんが、慢性的な胃酸逆流や胃炎が続くことで、粘膜が変化し「バレット食道」と呼ばれる前がん状態に進展することがあります。また、胸やけと同時に「みぞおちの痛み」「黒っぽい便」「食後の膨満感」がある場合、胃潰瘍や胃がんの可能性も否定できません。
当院では、早期がんを見逃さないために高精度な内視鏡検査（胃カメラ）を行っています。鎮静剤を使用し、苦痛を最小限に抑えた“眠っている間に終わる検査”にも対応しております。

胸やけと関係のある病気

胸やけの原因は単に「胃酸が多いから」ではありません。以下のような疾患が関係しているケースも少なくありません。

• 胃食道逆流症（GERD）：胃酸が繰り返し逆流して食道が炎症を起こす
• 食道裂孔ヘルニア：横隔膜のすき間から胃が胸腔内に押し上げられる状態
• 慢性胃炎／ピロリ菌感染：胃粘膜が慢性的に荒れて胃酸バランスが崩れる
• 胃潰瘍・十二指腸潰瘍：胃酸の刺激によって粘膜がただれる
• 胃がん・食道がん：初期には胸やけや違和感だけの場合も

胸やけが続く場合、「ただの逆流」と思い込まず、一度しっかりと検査を受けることが大切です。

胸やけ症状と胃カメラ検査

胸やけの原因を正確に調べるには、胃カメラ検査（上部消化管内視鏡検査）が最も有効です。胃カメラでは、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察し、炎症の有無やびらん、ポリープ、がんなどの早期病変を確認できます。
当院では、鎮静剤を使用した「眠っている間の検査」を実施しておりますので、検査に不安をお持ちの方でも安心して受けていただけます。また、鎮静剤を使用しない場合でも、経鼻内視鏡（鼻からの胃カメラ）をお受けいただければ、えずきが少なく検査中会話も可能です。

胸やけの治し方

胸やけの治療は、原因を見極めて適切にアプローチすることが重要です。
代表的な治療法は以下のとおりです。

• 胃酸の分泌を抑える薬（PPI・P-CAB）
• 胃酸を中和する制酸剤
• 胃の運動を整える薬
• ピロリ菌の除菌治療（感染がある場合）

一時的に薬で抑えても、再発を繰り返す場合は生活習慣や食事の見直しが欠かせません。当院では、薬の種類・用量・投与期間を患者さん一人ひとりの症状や背景に合わせて丁寧に調整しています。

自宅でできる胸やけ対策

胸やけは、ちょっとした生活の工夫で軽減できることがあります。

• 食後すぐ横にならず、2〜3時間あけて就寝する
• 脂っこい食事や甘いものを控える
• コーヒー、炭酸、アルコールの摂取を減らす
• 食べすぎを避け、腹八分目を意識する
• 枕を少し高めにして寝る
• タバコを控える
• ストレスをためこまない

こうした工夫を続けても胸やけが治らない場合は、自己判断せず消化器内科での診察・胃カメラ検査を検討しましょう。